レースは“走る実験室”  フォーミュラーEに見る次世代モビリティ技術 エンジニアリング | コラム

レースは“走る実験室”  フォーミュラーEに見る次世代モビリティ技術

ホンダの創業者である本田宗一郎は「レースは走る実験室」と考え、決められたレギュレーションの中で

最大限の成果を挙げるために様々なチャレンジを盛り込んだクルマ、バイクを走らせてきました。

年々エコを意識したレギュレーションが増え、その最先端が電気自動車のF1と呼ばれる「フォーミュラーE」です。

シャシー、バッテリー、タイヤはワンメイク(同じものを使う)で、モーター、インバーター、ギヤボックス、

冷却システム、バッテリーは各チームのオリジナルを使います。

同じ容量の二次電池(充/放電が可能な電池)を使うため、どれだけ無駄なく使うかはもちろん、

ブレーキ時に得られる回生エネルギー(※1)を効率よく回収するための電子制御が可能です。

また、ピットイン時にわずか30秒で完了する600Wの急速充電(ピットブースト)がマストのレースもあり、

ピットインする最適なタイミングの判断も大切です。

※1)ブレーキや減速時に生じるエネルギーを電気として回収し、再利用する技術。止まるときの力をムダにせず電気に戻す仕組み。

F1もそうですが、レギュレーションをしっかり把握しその中でどう差別化させるかが明暗を分けます。

フォーミュラーEでは、例えば空気抵抗をコントロールするフロントスポイラー(※2)のデザインを、

スピード重視の予選モードと電池の消費具合も考慮した決勝レースモードの2モードを準備します。

また、冷却システムは各チームで変更できるため、モーター・二次電池にとってベストな温度コントロールを

目指し、機器の設計はもちろん、プログラム設計にもチャレンジします。

※2)車の前部(バンパー下など)についている空気整流パーツ。車の前で空気の流れをコントロールし、安定性を高める装置。

例えば、

モーターの種類・温度状態によっては高回転になればなるほどエネルギーのロスが大きくなります。

二次電池の放充電時の温度が低すぎる/高すぎると貯めた電力をフルに放電できない、または電力が

電池に入っていかないというトラブルが発生します。

これまでのモータースポーツで扱う自転車やバイクなどの乗り物は、

とにかく軽く丈夫にするといった要求がほとんどでしたが、電気自動車ではシステムの緻密な温度制御が重要で、

電池内の化学反応の制御や電気特性、制御のスイッチング性能にも影響するのです。

この温度制御を実現するためには、

冷却水バルブの高速切り替えが可能な低フリクションかつ長寿命のシールや冷却媒体をロスなく分配

する水路設計、さらにそれを製品に正確に落とし込めるモノづくり技術が必要となります。

わずかな部品精度のばらつきが、レースの勝敗、そしてその先にある量産自動車のエネルギーロス化に

つながっているのです。

フォーミュラーEは26年も東京お台場で2日間開催され、エンジンの爆音はナシで、

モーター特有のメリハリの利いたレースが繰り広げられます。ぜひテクノロジーの観点から

観戦してみてはいかがでしょうか。