例えば、クルマでよく使われているポリプロピレン。これは、ひも状の「ポリマー」が絡み合うことで構造体になっています。
長い糸が絡まった集合体をイメージすると分かりやすいかもしれません。
低温域では、その糸自体が硬くなり、絡まりも強固になるため、簡単にはほどけません。
その状態で外部から力を受けると、
- 「絡まり」に余裕がある間は、変形してもすぐ元に戻り、
- さらに強い力が加わると、徐々に絡まりがほどけ、最終的に「破断」に至ります。
接着剤などにも使われるエポキシ樹脂は、
ひも同士が化学的につながって網目状になっているので、「ネットワークポリマー」とも呼ばれます。
この網目構造は、熱や化学反応を開始するきっかけとなる化学物質で形成されます(架橋といいます)。
そして、今回のテーマである「ダブルネットワークゲル(DNゲル)」は、
2種類の網に“役割”を持たせ、破断を防ぐよう設計された材料です。
そもそも「ゲル」とは、ゼリー状の軟質な樹脂の一種です。
(網目構造の中に大量の水分を保持させたハイドロゲルは、医療用途などで実用化されています)
ゼリー状なので、強度がかなり低いのですが、「DNゲル」は犠牲結合により生体軟骨同等の40MPaもの圧縮破断強度を発揮します。
壊れやすい結合部分(=犠牲結合)が先に荷重を受けることで、エネルギーを全体に分散させます。
これは、「高い荷重を針で受けのではなく、より広い面で受ける」といった応力集中を防ぐ効果になります。
そうして均等化されたエネルギーを、弱い材質ながらも全面で受けることで、強靭化を実現しています。
さらに「DNゲル」には、自己修復性があり、「強くて、長く使える材料」なのです。
エレベーターのガイドなどに使われる超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と同等以上の耐久性も発揮します。
今回紹介した「DNゲル」のように、樹脂の特性をフルに引き出し、求める機能を実現する。
あるいは逆に、クルマが求める機能に対して、樹脂の構造設計やシミュレーション解析で応えていく。
そうした、マテリアル・ベース・リサーチメント(MBR)を通じて、
私たちは材料開発から設計、そしてモノづくりまでワンストップで展開しています。
【参考文献】
Jian Ping GONG(2024)「ダブルネットワークゲルの最新動向とトライボロジーへの応用」『トライボロジスト』第69巻 第6号
