近年、ホルムズ海峡問題や中東情勢などの地政学的リスクやエネルギー需給の変化を背景に、
エネルギーの安定供給と効率的な輸送の重要性が改めて注目されています。
石炭や石油、そしてガスなどのエネルギーの輸入依存率が高い日本は、
安全な入手はもちろん、いかに効率的にエネルギーを運ぶかがキーとなります。
現在、注目を集めている液化天然ガス(LNG)や、次世代のクリーンエネルギーとして期待される液体水素。
これらを安全に運び、漏らさずに使うためには、「極低温」の環境に対応した技術が欠かせません。
特に水素は約-253℃で液体となるため、
真冬の南極よりもはるかに下回る極めて厳しい温度環境を想定した製品開発が求められています。
液体水素設備では、極低温環境への適応が求められるため、一般的な潤滑油の使用が困難です。
そのため、金属製シリンダーとピストンリングは、無潤滑というきわめて過酷な条件でしゅう動することになります。
スターライト工業では、金属にはない「しなやかさ」を利用し、
高いシール性能を特長とした樹脂製ピストンリングを提案しています。
しかし、液体水素が存在する約-253℃という極低温雰囲気では、そのしなやかさが大きく変化するため、
そのしゅう動形態はさらに複雑になります。
狭い温度範囲で使用される製品に比べ、約-253℃から常温+αの温度範囲、
つまり約300℃にも及ぶ温度差がある環境下でも、安定した性能の確保が求められます。
また、この幅広い温度雰囲気で樹脂製品を使うには、
その周辺で使われる金属部品との熱膨張の差を考慮した複雑な設計が必要になります。
樹脂部品と金属部品の隅間を常温でぴったりに設計してしまうと、
極低温雰囲気では金属部品に比べ樹脂部品の収縮が大きくなるので隙間が大きくなり、漏れやすくなります。
一方で、極低温雰囲気でぴったりの設計にしてしまうと、
常温で組み付けようとすると樹脂部品は大きく膨張するためきつくなり、組みつけにくくなるのです。
このような極低温雰囲気での製品の挙動は、常温の延長線上では予測しにくい「未知の領域」であり、
理論や過去のデータだけで最適解にたどり着くことは容易ではありません。
スターライト工業では、この課題に対応するため、実際の使用状況に近い評価環境を構築しています。
お客様の使用設備を想定した温度条件で性能評価を行い、得られた知見やデータを蓄積し、
データベース化をすすめています。
このような評価をもとに温度、荷重、しゅう動相手材、雰囲気ガスなど複雑な要素を考慮し、材料選定はもちろん、
熱収縮やシール性能を見据えた製品設計をご提案し、水素社会を支える基盤づくりに貢献していきます。
