前編↗では、OmimimO(おみみも)プロジェクトの原点や、こどもの聴覚保護と、イヤーマフを“みんなで着ける文化をつくる”重要性について伺いました。後編では、スタジアムで親子が過ごす意義、広島という郷土に込められた願い、そして異分野の仲間たちとつながる共創についてお聞きしました。

🎧「怖い記憶」にも「大切な思い出」にもなる
親子で過ごすスタジアムの時間
ス(スターライト):スタジアムって、家族で行くとすごく一体感が生まれますよね。
七(七木田教授):そうなの!でも実際は、チャンスシーンで大人が一斉に立ち上がり「うおおー!」と叫んだり、
応援チャントが響き渡ると、こどもがびっくりして一瞬息を止めるんです。目も耳もふさいで体を丸めたり、泣き出すこともあります。
親は「一緒に盛り上がれるはず」と思って連れてきたのに、こどもには恐怖体験になってしまうんです。
ス:そんな悲しいこと、あってはいけません…!
七:そしてね、広島は人口流出が多い県です。
だからこそ、幼少期にスタジアムで家族と応援した思い出が、
大人になって「やっぱり広島がいいな」と帰ってきたくなる理由になる、と私は思っています。
スタジアムは、こどもも大人も“思いっきり声を出して、はしゃいでいい”特別な場所。そんなところ、他にどこがあるでしょう。
ス:みんなと思いっきり応援した思い出は、かけがえのない宝物ですね。
七:応援用イヤーマフのOmimimOは、家族で安心して盛り上がり、楽しく応援できるようにする手段です。
「楽しかったね」と笑い合う、あのかけがえのない瞬間は、家族だけでなく地域との“確かで温かなつながり”も実感させてくれます。それが、「自分はここにいていいんだ」「自分もこの地域のメンバーなんだ」という、こどもの自尊感情を育むことにつながるんです。
ス:こどもにとって“ここが自分の場所だ”と感じられる体験―スタジアムでの応援は、娯楽以上の役割があるんですね。

七:さらに、休日は親子で屋外に出て、お日様を浴びて、ボールで遊んで、思いっきり身体を動かそうよ!
という、HappyでHealthy な循環にもつながります。そういう“好循環”を、地域全体で支える環境をつくりたいんです。
ス:OmimimOは聴覚を守るための道具でありながら、家族の一体感も、地域の一体感も育む存在なんですね。
🎧門戸をたたけば「Welcome!」
異分野と出会い、思いをカタチにする
ス:スターライトとの取り組みについて、どう感じていますか?
七:スターライトとの出会いには奇跡のようなご縁を感じています。
私の故郷の母校(滋賀県)の近くに、それもいつも通っていた道路の川(金勝川)向うにこんな会社があったとは!
まさかこの道を再び通って、未知の世界に触れさせていただけるとは思いませんでした。
ス:その“ご縁”の背景には、先生が外へ踏み出すきっかけになった出来事があったのでしょうか。
七:かつて私は、重複障がいや目が見えないこどもの先生をしていました。
同じ空間で同じ時間を過ごしているのに、こどもが一生懸命伝えようとしている“何か”を汲み取れない。
その無力感は、今でも忘れられません。保育教育の力だけでは届かない壁が、確かにある。
「もっと理工学の力が必要だ」と痛感しました。
ス:プロジェクトを進めるうえで、その後悔さえも先生の原動力になっているのですね。
七:そしてもうひとつ。
政府が掲げる「こどもまんなか」というキャッチフレーズが、私たち保育者には“意識のど真ん中”にあるのに、
社会の中では意外と知られていないという事実でした。
保育教育の世界にいると、“みんながこどもの発達について知っているものだ”という思い込みが、正直どこかにあるんです。
でもコロナ禍の国会答弁を聴いていて、「実はそうではない」という現実に直面しました。
「私たち、一体何をしてきたんだろう」と胸がつまるような気持ちになって。
「もっと外に出て、もっと多くの人に伝えなければ」、その思いが、私の背中を強く押しました。
ス:OmimimOは「こどもまんなか」のシンボルになりますね!

七:
それ、いいですね。そうしましょう!
経済も大事。でも、今も未来も生きるこどもの健やかな発達が、経済と同じくらい大事だと心を同じにしてくださるスターライトのみなさんがいてくださること、本当にありがたいです。
私の思いがたっぷり詰まった小さなOmimimOの話を、真剣に聞いてくださり、より軽く、安全で、こどもが着けたくなるカタチにするために、技術的なアイデアを次々と出していただいてます。
ス:先生の思いに共感して、仲間がどんどん増えています。
幼児教育やスポーツ科学、音や材料の専門家、プロスポーツチームや地域の人たち─
さまざまな人たちが力を合わせて、このプロジェクトを一緒に育ててくれているんだなと感じます!
七:ええ、このプロジェクトを通じて、
保育教育の世界とは異なる分野の専門家の方々と出会えて、知らない世界に触れるワクワクを感じています。
これからも学生とのワークショップや、幼稚園、スタジアムでの調査など、現場に足を運び、
事実を自分自身の目や耳、嗅覚、皮膚感覚などの感性でキャッチしながら、活動を続けていきます。
みなさん、「次はどんな取り組みになるの?」と楽しみにしていてくださいね。
