フッ素ガスは、高い反応性を持つがゆえ、使用方法を誤れば大事故につながる、きわめて扱いの難しい物質です。高松帝酸株式会社(以下、高松帝酸)は、このフッ素ガスを使った表面処理技術で、これまでにない機能をつくりだしています。この特殊技術とスターライトのマテリアルテクノロジーというそれぞれの強みを掛け合わせ、新しい可能性をひらこうと共創活動を続けています。

森 一高(右)
FTCガス技術部 部長。入社直後からフッ素ガス表面処理の事業の立ち上げに携わり、研究開発から受託加工、装置販売まで一貫した事業展開を主導。2006年には国内初となる大型フッ素化処理プラントの国産化・販売を実現。社外の技術者と連携した研究・技術開発を推進している。
垣内 博行(左)
FTCガス技術部 ガス技術グループ 研究員。フッ素ガス表面処理の技術開発・評価を担当。ガス表面処理をする材料種類や用途に応じた処理条件の提案、実装を見据えた技術検証に携わる。
なぜ高松帝酸は、フッ素ガスに向き合ってきたのか
スターライト(以下、ス):高松帝酸は、これまで高圧ガスや特殊ガスなど、「扱いが難しいガス」と積極的に向き合ってきた企業という印象があります。その中で、なぜ今、フッ素ガスという、きわめて難度の高い領域に向き合うことになったのでしょうか。
高松帝酸 森(以下、森):私たちの仕事は、ガスを「製造すること」だけでなく、ユーザーが安全に、そして安定した条件で使うのかまで考えなければなりません。フッ素ガスは毒性が高く、きわめて強力な酸化作用があるので危険度が高く、扱いには高度な技術が必要です。しかし、危険だからといって避けてしまえば、その先にある可能性には辿り着けない。「リスクをしっかり制御し、きちんと価値を生む」、それが私たち高松帝酸の役割だと思っています。
フッ素ガス表面処理で「何が変わる」のか
ス:では、フッ素ガスを用いた表面処理技術で、どのような価値を生み出そうとされているのでしょうか。
森:フッ素ガス表面処理は、その強力な反応性、フッ素原子・フッ素化合物の特異性により素材の表面特性を劇的に変えることで、新しい用途を大きく広げる技術だと考えています。たとえば、ポリオレフィン樹脂容器の表面にバリア性能を付与すれば、有機溶剤であっても内容物の透過を防ぎ、安価な容器で製品品質を長期的に維持できます。また、接着や塗装前の表面状態を改質すれば、剥がれに強く、そして製造品質が安定する可能性があります。
ス:製品の性能向上はもちろん、“ものづくり”にも効果がある技術なのですね。
森:最近では、親水性を付与させた表面処理により、液体を表面に均一に広げる工程の効率化や、微細な表面形状が引き出す機能の安定性向上といった用途にも広がっています。
現場を支えている技術と、共創の意味
ス:実際に表面処理の検討や検証を進める担当者として、フッ素ガス表面処理技術のこれからの可能性とは?
高松帝酸 垣内(以下、垣):
フッ素ガス表面処理は、材料そのもの全部は変えずに、必要な機能だけを付与できる点が大きな特長だと考えています。
たとえば、ゴムの弾力や樹脂のしなやかさや加工性を活かしつつ、表面摩擦係数の低減、バリア性やぬれ性(水などの液体をはじかず、表面に保持できる特性)、密着性を狙いどおりに調整できる。これは、製品の高機能化はもちろん、ひとつの製品にたくさんの機能を持たせることができますし、設計の自由度を高めることにもつながります。

ス:そんな可能性を広げるうえで、スターライトの役割とは何でしょうか?
垣:高松帝酸はガス、スターライトはプラスチックをはじめとする材料の専門家です。同じ試験結果を見ても着目点が違うので、「なぜそうなるのか」という解釈や、次に何を確かめるべきかの仮説が幅広くかつ専門的な視点から生まれてくる。そして、自然とより論理的で具体的な答えになっていく。だから、より早くみんなが腑に落ちた技術検証が進められていると感じています。
森:具体的には、私たちがガス処理の条件やプロセスを設計し、スターライトには処理後の材料の物性変化を評価していただいてます。同じ処理でも材料が異なると効果は大きく変わるため、材料の専門家と一緒に取り組むことが非常に重要なんです。
技術の先に、どんな未来を描いているのか
ス:今回の共同研究は、将来的にどのような分野で役立つ可能性があると考えていますか?
森:いま具体的な用途を断定できる段階ではありませんが、
一つの方向性として話に出ているのが、新エネルギー分野です。
垣:たとえば、ガス状のエネルギーはどんどん高圧化されており、その周辺機器向けの材料に求められる性能はこれまで以上に厳しくなっています。もし、表面処理によって耐久性や信頼性を底上げできるとしたら、より高い要求に応えられる製品開発ができると考えています。

森:設備向けでも製品の耐久性や信頼性が向上すれば、定期点検のインターバルが長くなり、想定外のトラブルのリスクも低下するはずです。私たちは、そうした状態を当たり前にしていきたいと考えています。
